頭痛にお悩みの方で、「お腹が空くと頭痛がひどくなる」と感じる方はいませんか?
あるいは、「朝食を抜いた日に限って頭痛が起きやすい」という方もいるのではないでしょうか。「空腹と頭痛にどんな関係があるの?」と不思議に思うかもしれませんね。
今回は、空腹で頭痛が引き起こされるメカニズムと、その予防策について解説します。空腹時の頭痛でお悩みの方はもちろん、普段頭痛に悩まされている方もぜひ参考にしてください。
目次
空腹で頭痛が起こるのはなぜ?
空腹と頭痛の関係を説明する前に、まずは空腹を感じるメカニズムについて簡単にご紹介します。
前回の食事から時間が経っているときや、運動・仕事・勉強などでエネルギーを消費した後、体の中では血糖値が下がった状態となり空腹感を覚えます。
血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことで、ブドウ糖は脳・神経・筋肉などあらゆる生命活動のエネルギー源となる重要な栄養素です。
運動や仕事のように多くのエネルギーを必要とする動作では、たくさんのブドウ糖を消費します。すると、脳の視床下部にある「摂食中枢」が血糖値の低下を感知し、糖質を摂り込む(=血糖値を上げる)ために「お腹が空いた!」と感じるようになっているのです。このとき、すぐに糖質を摂取できればよいのですが、そうでない場合は体の中で「アドレナリン」と呼ばれるホルモンが分泌され、血糖値が上昇する仕組みになっています。
アドレナリンには血管を収縮させる作用もあり、アドレナリンの分泌が落ち着くと、その反動で今度は血管が拡張します。このとき拡張した血管が、周囲の神経を刺激することで頭痛が引き起こされると考えられているのです。
少々むずかしい話になってしまいましたが、空腹と頭痛の関係をまとめると次のようになります。
1. 血液中のブドウ糖が消費されて少なくなると、脳の摂食中枢がそれを感知して空腹感を引き起こす
2. 空腹の状態が続くと、アドレナリンを分泌して血糖値を上げようとする
3. アドレナリンの作用によって、血管が収縮→拡張する際に、周囲の神経が刺激されて頭痛を引き起こす
つまり、空腹(血糖値の低下)によって分泌されるアドレナリンの作用が原因となり、頭痛が引き起こされるというわけです。
血糖値が下がりやすいのはどんなとき?
では、どのようなときに血糖値が下がりやすいのでしょうか?
空腹時の頭痛は血糖値の低下が引き金となるため、頭痛を予防するためには血糖値が下がりやすい状況を知り、それを回避することが大切です。
血糖が下がりやすいタイミングや生活習慣には、次のようなものがあります。
• 食事の時間が不規則
• 食事の量が少なく、栄養バランスに偏りがある
• 過度なダイエット
• 体調不良で十分な食事が摂れない
• アルコールの摂りすぎ
• 空腹時の運動・入浴
とくに食生活の乱れは血糖値に大きく影響し、頭痛だけでなくほかの病気を招く原因にもなります。ひとつでも当てはまる方は、生活習慣の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
血糖値が原因で頭痛が起きる病気
空腹になると低血糖になり頭痛が起こりやすくなることはすでにお伝えした通りですが、血糖値が原因で頭痛が起こる病気があります。それは皆さんもよく知る「糖尿病」です。
糖尿病はインスリンが十分に働かないことで血液中の血糖が増えてしまう病気です。高血糖の状態になると血液の流れが悪くなるため、首・肩・背中のコリが強くなり慢性的な頭痛が起こしやすくなります。
また、糖尿病になると血糖値のコントロールがうまくできないため、低血糖を起こしやすくなります。低血糖になると急激に体調が悪くなることもあり、頭痛のほかにも手の震えや動悸などの症状が起こります。低血糖の状態が続くと意識を失ってしまうこともあるため注意が必要です。
糖尿病は生活習慣が原因となるものと、先天的にインスリンがうまく作れないものがあります。糖尿病は薬で対応して血糖値をコントロールできますが、治療をしないと空腹時やアルコールの過剰摂取、運動などで低血糖を招きやすいです。
気になる症状があれば病院の予約をとり、診察・診断を受けましょう。
空腹で頭痛を引き起こさないための予防策
頭痛予防のポイントは「空腹の時間が長くならないようにすること」「血糖値をなるべく一定に保つこと」です。
血糖値は食生活や運動(エネルギーを消費するあらゆる動作)の影響を大きく受けるため、空腹による頭痛を予防するには次のことに注意しておくと良いでしょう。
• 食事を抜いたり、食事と食事の間隔が長くなったりしないように、規則正しい食生活を心がける
• 暴飲暴食や過度なダイエットを控える
• 食事はよく噛んでゆっくり食べる
• 運動や入浴は食後に行う
• 運動は無理のない範囲で行う
• 空腹時に備えて、ブドウ糖や飴などを常備しておく
普段からこのような対策をとることで、血糖値の下がりすぎによる頭痛を予防できると考えます。それぞれの予防策を詳しく解説します。
規則正しい食生活を心がける
これまで食事を抜いたり、食事と食事の間隔が長くなっていたりしていた人は、食事を摂るタイミングを見直して、わずかでも食事をする癖をつけましょう。
血糖値が下がってしまう原因は空腹時間の長さも関係しています。どうしても忙しいときはスキマ時間でも手軽に食べられるおにぎりやサンドイッチなどがおすすめです。
暴飲暴食や過度なダイエットを控える
若い女性は理想の体型を目指すあまり、過度なダイエットをしがちです。ダイエットですぐに結果を出すために、食事量を極端に少なくすると血糖値が下がりやすくなり低血糖の状態が長くなります。
また、その反動で暴飲暴食をすると血糖値が急激に上がってしまうため、これも体にはよくありません。ダイエットの基本は食事内容の見直しです。食事を摂らないダイエットではなく、しっかりご飯を食べて運動量を増やすようにしましょう。
食事はよく噛んでゆっくり食べる
食事の早食いは血糖値を急激に上昇させてしまう原因です。よく噛んで食べることで血糖値の上昇を抑えます。また野菜から先に食べることも、血糖値の上昇を抑えます。
忙しいとどうしても短時間で食事を済ませてしまいますが、よく噛んで野菜から食べることを意識するだけでもよさそうです。
運動や入浴は食後に行う
食前に運動や入浴を行うと、血圧や血糖値が下がってしまうことがあります。また、体調を崩しやすくなることから食事前の運動や入浴は控えるようにしましょう。
どうしても食事前に運動や入浴をしてしまう場合は、軽食を摂ったりするのがベストです。
運動は無理のない範囲で行う
しっかり食べて運動量を増やしてダイエットをする場合も、無理な運動はNGです。食後で大丈夫と思っていてもその日の体調によっては、低血糖になったり体調を崩したりすることもあります。
運動はその日の体調と相談して、無理のない範囲で行うことが大切です。
ブドウ糖や飴などを常備しておく
低血糖への対策は、症状が起きる前にブドウ糖や飴などの糖分を補給することです。しかし、低血糖の症状が起きてからでは症状改善までに時間がかかってしまいます。
朝食を抜いたり、体調が優れなかったりして低血糖になりそうだと思うときは、早めにブドウ糖入りのラムネや飴などを食べましょう。また、おにぎりなどの軽食も有効です。
空腹は片頭痛を誘発する?
片頭痛(偏頭痛)は、目からこめかみにかけて脈打つような痛みを伴う頭痛を指します。この片頭痛はさまざまなきっかけで起こることが分かっており、たとえば以下のようなものがあります。
・空腹
・ストレス
・ストレスから解放されたとき
・寝不足や寝過ぎ
・女性ホルモンの変化
・天気や気圧
・アルコール
・肩こり
・光
・音
など
このようにさまざまなものが片頭痛の発生に関与しています。これまでも説明しているように、空腹も片頭痛を誘発する要因です。
片頭痛の患者さんは、心身のリズムの変化や環境の変化、体内のホルモン変化などに対して、ほかの人よりも敏感であることが分かっています。
日常的に朝食を食べない生活や空腹を我慢する時間が長い、極端な食事制限をしたダイエットなどは、血糖値が下がりやすく片頭痛を招きます。おさらいになりますが、血糖値が下がると、アドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。
しかし、これらのホルモンは心拍数の上昇や脳の覚醒などの作用があるため、脳の血管が過度に収縮・拡張して片頭痛を招きます。また、欠食や長時間の空腹で低血糖になっているときの脳への血流量の低下を補うため、血管が拡張しやすくなることも、片頭痛が起きる原因です。
さらに、片頭痛の発生元となる視床下部には、空腹・満腹をコントロールする機能や、自律神経をコントロールする機能などがあります。また、ホルモン中枢の脳下垂体と連結しているため、ストレスや睡眠、ホルモンバランスなどとも密接にかかわっているのです。
そのため、血統値が下がると視床下部が敏感に反応して、片頭痛を誘発する可能性もあります。
片頭痛の対処法
片頭痛は症状がひどくなると、吐き気や頭痛を伴うことがあり、光や音により過敏になる傾向があります。明るい場所やうるさい場所では、吐き気や頭痛が強くなることもあります。そのため自分の片頭痛の誘因するものを理解して対処することが大切です。
まずは暗い静かな場所で安静に過ごすことが大切です。必要に応じて薬を使用してもよいでしょう。また、片頭痛は十分な睡眠を取ることで治します。片頭痛があれば、無理をせずゆっくり休みましょう。
それでも頭痛の症状が続く場合は、頭痛薬(鎮痛剤)を使用します。
頭痛は運動をして体のリズムを整えることも有効です。例えば、一駅分歩いてみる、スキマ時間にヨガやウォーキングをするなどの心掛けが大切です。運動は片頭痛だけでなく心の健康にもなります。
ただし、運動後は低血糖になりやすいため、経口補水液を飲んだり、間食をしたりして低血糖の対策も忘れずに行いましょう。
片頭痛に似ている緊張型頭痛とは?
片頭痛と似ている病気に緊張型頭痛があります。緊張型頭痛は、何らかの原因で、後頭部から首筋にかけて圧迫感のある頭痛が起きている状態です。頭を締め付けられているかのようなずっしりとした痛みが頭の両側に起こります。
緊張型頭痛は、身体的なストレスと、精神的なストレスの2種類に分かれます。
身体的なストレスが要因の場合は、首筋の筋肉が弱い方ほど頭痛が起こりやすい傾向があります。これは、筋肉が弱いことで、頭部をしっかりと支えることができないためです。そのため、首や肩周辺のコリを解消したり、首周辺の筋肉を鍛えておいたりするなどの対策が効果的です。
精神的なストレスが要因となる場合は、緊張状態が長時間続くことで、痛みを調整する脳の部分が上手く働かず頭痛を引き起こします。真面目な方や几帳面な方がかかりやすいのが特徴です。
緊張型頭痛は、空腹が直接の原因で起こることはありません。しかし、身体的・精神的なストレスが原因で、ストレスがたまると食欲低下の傾向がある人は、空腹にならないように注意することが大切です。
一度にしっかりと食事がとれないときは、食事の回数を増やしたり、食べやすく消化の良いものを選ぶなどの対策を取ってみましょう。
長引く頭痛は専門医に相談を
頭痛の治療においては、頭痛の原因を知り、原因に応じた適切な治療・ケアを行うことが大切です。
今回のように「空腹(血糖値の低下)」が原因の場合、血糖値が下がりやすいタイミングや生活習慣を知り、先回りして予防することがポイントになってきます。
ほかにも、頭痛の原因には体調・気候・生活環境などさまざまなものがあります。重篤な病気のサインとして頭痛が現れることもあるため、少しでも頭痛が気になる場合は、早めに専門医に相談されると良いでしょう。
大清水クリニックでは、患者様の症状を和らげ、快適な毎日をお過ごしいただけるよう診療に努力いたします。
また大清水クリニックでは、子供の頭痛はもちろんのこと、めまい・しびれに悩む女性に寄り添った治療もご提案しています。
つらい頭痛・めまい・しびれ等にお困りの方は名古屋市緑区の大清水クリニックへお気軽にご相談ください。