「約束を忘れる」「買い忘れが増えた」「前日に何を食べたか思い出せない」など、程度はさまざまですが加齢とともに増える物忘れ。しかし、物忘れの中には病気が原因になっているものもあります。ひどい物忘れがあるときは、認知症やそのほかの病気がないか診察を受けましょう。
この記事では、ひどい物忘れの原因となる病気を紹介します。
加齢による物忘れと認知所の物忘れの違い
人は誰しも誰かの名前を思い出せなかったり、約束を忘れたりするなどの物忘れの経験があるでしょう。これは、ごく自然なことでほとんどは心配のないものです。
しかし、年を取るとその頻度が増えていきます。老化による物忘れは脳の機能が徐々に低下するため起こるもので、この場合も加齢に伴った自然な現象と言えます。
しかし、体験そのものを忘れたり、日付感覚がなくなったり、同じ話を何度もするなどのひどい物忘れは、認知症の初期症状かもしれません。
認知症は脳の海馬や頭頂葉などの記憶に関する機能の細胞が委縮したり、脳の血管が障害されたりすることで引き起こされる認知症です。認知症は症状が進行していくため、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。
脳の病気が原因で起こる物忘れ
ひどい物忘れの症状がでるものの中には、脳の病気が原因で起こっているものがあります。ここでは、物忘れが起こる脳の病気を紹介します。
慢性硬膜下血種
慢性硬膜下血種は頭部にケガをしたあとに、1~2か月かけて頭蓋骨の下にある硬膜と脳のすき間にじわじわと血液が溜まる病気です。
血液が溜まり血腫が進行すると、頭痛や物忘れ、認知症に似た症状が現れます。認知症に似た症状とは意欲・反応の低下や性格の変化などです。そのほかにも歩きにくさや片方の手足に力が入らないなどの症状も現れることがあります。
高齢者に多く見られ、10万人に1~2人程度が発症しますが、正しいタイミングで治療を行えば完治する病気です。
正常圧水頭症
正常圧水頭症は、交通性水頭症のひとつで、脳の髄液が増加して脳室が拡大しているにも関わらず、髄液圧が正常なものをいいます。
60~70代の高齢者に起こりやすい病気で半数は原因がはっきりしません。そのほかの原因ではくも膜下出血や頭部外傷、髄膜炎のあとに起こります。症状は物忘れや歩行障害、尿失禁などです。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは、血液中にある甲状腺ホルモンの作用が通常よりも低下した状態です。疲労感や無気力、むくみ、体重増加、記憶力の低下などの症状が特徴です。
原因は甲状腺でホルモンがうまく作れない場合と、ホルモン自体は十分に分泌されているのにうまくホルモンが作用しない場合とがあります。前者では橋本病が最も多い原因です。
老人性うつ病
認知症の症状とよく似ているため、間違われやすいのが老人性うつ病です。老人性うつ病も基本的な症状はうつ病と同じですが、引っ越しや、仕事の退職、家族との別居や死別などの環境的要因や心理的要因が原因となって起こります。
認知症との違いは、自責の念や希死念慮を抱いたり、本人に自覚症状があったり、質問に対する受け答えがしっかりしていたりする点です。何かをきっかけに気分が落ち込んだり、物忘れが激しくなったりしたときは医療機関に相談しましょう。
まとめ
物忘れの程度がひどい、急激に物忘れが進む、物忘れだけでなく他の症状が伴っているなどが見られるときは要注意です。一度、物忘れ外来や神経内科を受診し、相談されることをおすすめいたします。
大清水クリニックでは、患者様の症状を和らげ、快適な毎日をお過ごしいただけるよう診療に努力いたします。
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