運動中や運動後に「頭が痛い」と感じたことはありませんか?
普段からスポーツや筋トレに励む方にとって、運動によって生じる頭痛は悩ましい問題です。さらに、頭痛の多くは一時的なものですが、まれに重篤な病気が潜んでいることもあります。
つらい症状や病気への不安を軽減するためにも、頭痛の原因や種類・対処法について理解しましょう。
目次
運動によって生じる「労作性頭痛」とは?
頭痛の種類には大きく2つあり、ひとつは明らかな病変がなくあまり心配のない「一次性頭痛」、もうひとつが脳や血管の病変によって生じる「二次性頭痛」です。
運動中や運動後に生じる頭痛は一次性頭痛に分類され、体の動き(=労作)が誘因となって生じるため『労作性頭痛』と呼ばれています。ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、40歳以上の人に多く見られます。
労作性頭痛は、肉体運動や排便、性行為が原因で、短いものでは5分程度、長くなれば24時間程度も持続するのが特徴です。こうした労作性の頭痛が起きているときに体を動かす、咳を、暑さ・寒さ、高地などの条件で症状が悪化することもあります。
一次性頭痛には、ほかに「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」などがあり、いずれもあまり心配のないタイプの頭痛です。一方、二次性頭痛は「くも膜下出血」「脳腫瘍」「髄膜炎」など命に関わる重篤な病気が原因となります。
なぜ運動で頭痛が生じるのか?
ではなぜ運動をすると頭が痛くなることがあるのでしょうか。労作性頭痛の原因には諸説ありますが次のようなことが考えられます。
もともとの慢性頭痛が運動によって誘発される
もともと片頭痛持ちの人は、スポーツや筋トレ、ダイエットなどによって頭痛を引き起こすことがあります。
片頭痛の人は適度な運動が症状の改善に効果があるとされていますが、運動不足の人では、血流が良くなって血管が拡がるため痛みが増しやすくなります。慢性的な片頭痛がある人は、徐々に運動量を増やすなどの工夫が必要です。
後頚部の筋肉への過剰な刺激
運動によって腕・肩・首に過剰な負荷がかかると、後頚部(首のうしろ)の筋肉がダメージを受けて頭痛を引き起こすことがあります。
特に上肢への負担が大きい筋トレや、格闘技、バトミントンやバレーボールなどの首をよく使う競技は、事前のストレッチや準備運動が不十分なことが原因で頭痛が生じることがあります。
手や足の柔軟だけでなく首や肩周辺もしっかりストレッチして、首や肩に負担をかけすぎるような動作は控えましょう。また、痛いと感じるときはすぐにアイシングして冷やすことも大切です。
脱水症状
ダイエットのために激しい運動を取り入れることもあるでしょう。また、飲酒した次の日にジムなどで汗をかいたり、スポーツをしたりすることもあるかもしれません。
こうした状況のときに激しい運動で多量の汗をかいたり、運動中の水分補給が不足したりすると体内で必要な水分が不足した状態になり、これが原因で頭痛が起こることがあります。これを脱水症といい、頭痛のほかに、のどが渇く、めまい、吐き気などの症状が特徴です。
特に飲酒をすると、アルコールの作用でトイレが近くなり脱水状態になりやすいです。脱水に近い状態になっているときに、運動をして汗をかくとさらに体の水分が失われてしまい、脱水症状による頭痛を引き起こしやすいため注意しましょう。また飲みすぎにも注意が必要です。
特に子供は大人のように上手に水分補給ができないこともあるため、こまめな水分摂取を促すことが大切です。
酸欠状態
激しい運動や登山などで酸欠状態になると、血管が拡張し頭痛が生じるといわれています。酸欠の状態が続くと、脳は血管を拡張してより多くの酸素を取り込もうとします。すると、血管の周りにある神経を刺激して頭痛が起こるのです。
また、現在はマスクを着用する機会が増えています。マスクの着用により、マスク内にこもっている二酸化炭素を多く含んだ空気を吸うことで、酸欠になることもあります。こうしたことも、頭痛を引き起こしてしまう原因です。
労作性頭痛の対処法
頭痛が運動時に限定しているのであれば、労作性頭痛と考えて問題ないでしょう。運動によって引き起こされる頭痛ですので、一番の対処法はスポーツや筋トレなどの運動を制限して、症状がでたらそれ以上の運動は控えすぐに休むことです。
しかし、趣味や健康のために運動をしている人は、「頭痛をうまく対処しながら運動を続けたい」と考えるかもしれません。そこで、運動中の頭痛と上手に付き合うために、労作性頭痛が起きた場合の対処、改善方法・薬について解説します。
運動量を調節する
まず大前提として、運動中に頭痛の症状が起こりやすい人は運動量を調節しましょう。毎回同じ運動メニューをこなすのではなくて、その日の体調に合わせてメニューを組むことも大切です。
ダイエットや健康維持のための激しい運動は一時的な減量効果は大きいですが、その分頭痛の原因になったり体調不良を引き起こす原因になったりします。
とくに、首や肩周辺の筋肉の負傷は頭痛の原因になるため、後頚部の筋肉に過剰な負担がかかるトレーニングは避けましょう。
運動前に十分なウォームアップをする
運動前の柔軟は怪我を防いで頭痛を防止します。また片頭痛の人は事前にしっかりとウォームアップをすることで急激な血流増加を防ぐことができ、頭痛の緩和に役立ちます。
そのため、運動の前にしっかりとストレッチや準備運動を行い、筋肉のダメージを予防しましょう。
十分な水分補給
運動中の脱水症を予防するため、運動時に限らず、普段からこまめな水分補給を心がけましょう。脱水症の症状があれば、風通しの良い日陰に移動し、症状が落ち着くまで休むことが大切です。
子供の場合は保護者がこまめに水分摂取を促しましょう。また、運動中はミネラルウォーターやお茶よりも、経口補水液やスポーツドリンクの方が好ましいです。水分だけでなく、塩分やミネラルを補給して脱水症を予防しましょう。
痛みを感じたら運動を中止する
運動中に痛みを感じたら、運動を中止しましょう。また、当日体調がすぐれないと感じたら、その日は運動をしないという選択をすることも大切です。
そのまま続けると症状が悪化したり長引いたりすることもあるため、症状が軽い段階で運動の中止や、運動をしない選択をしましょう。
薬物療法
労作性頭痛に対して、インドメタシンやエルゴタミンなどの鎮痛剤が有効なことがあります。
運動中に頭痛が起こる場合は、一度頭痛専門医がいる医療機関を受診して診察を受けましょう。その上で、医師の指示に従ってこれらの薬を使用するようにしましょう。
患部を冷やす
血管の拡張が原因の場合、患部を冷やして血管を収縮させることで症状の緩和が期待できます。
首の怪我や痛みが原因で頭痛が起きている場合も、首や肩周辺をアイシングして痛みを緩和すると頭痛が和らぐことがあります。ただし、首や肩の筋肉の痛みが続くときは整形外科を受診しましょう。
病的な頭痛との鑑別が重要
頭痛は、他の病気の症状として現れることがあり、ときに命に係わることもあります。強い痛みやそのほかの症状にも注意し、早めに受診することが大切です。
まれに重篤な病気が潜んでいることも
労作性頭痛は明らかな病変を認めない「一次性頭痛」に分類されますが、ごくまれに重篤な病気が隠れていることもあります。こうした病気は詳しい検査をしないと、一般の方には判断ができないため、発見が遅れてしまうこともあります。
くも膜下出血・脳腫瘍・髄膜炎など命に関わるような病気の前兆として頭痛が生じることもあるため、これらの病気との鑑別が必要です。
運動のたびに頭痛を感じる・痛みがひどくなるなど、少しでも不安を感じたら医師の診察を受けることをおすすめします。
早めに受診すべき症状
「二次性頭痛」の場合、迅速な対応が治療効果や予後を左右します。次のような症状がある場合は、なるべく早く医師の診察を受けましょう。
• これまでに経験したことのない、突然の激しい頭痛
• 徐々に痛みが強くなる
• (これまでに頭痛を経験したことがなく)50歳を過ぎて初めて経験する頭痛
• 手足がしびれる、動かしづらい、呂律が回らない、発熱、吐き気、嘔吐など頭痛以外の症状がある
• 普段の頭痛とパターンが異なる(頭痛の現れ方、痛みの程度、持続時間など)
痛みは体が発する何らかのサインです。「たかが頭痛」と思わず、緊急性のある頭痛とそうでない頭痛をしっかりと鑑別し、原因に応じた治療を受けることが大切です。
少しでも不安なことがあれば専門医にご相談を
頭痛の約9割は、あまり心配のない一次性頭痛です。
運動によって生じる労作性頭痛も、うまく対処すれば普通の生活を送れるケースがほとんどですが、「万が一」ということも考えられます。
また、たとえ病気がなくても慢性的な頭痛は心身ともにストレスを感じ、生活の質を下げる原因になります。少しでも苦痛や不安に感じていることがあれば、まずは専門医に相談してみましょう。
大清水クリニックでは、患者様の症状を和らげ、快適な毎日をお過ごしいただけるよう診療に努力いたします。
また大清水クリニックでは、子供の頭痛はもちろんのこと、めまい・しびれに悩む女性に寄り添った治療もご提案しています。
つらい頭痛・めまい・しびれ等にお困りの方は名古屋市緑区の大清水クリニックへお気軽にご相談ください。