以前、職場で偏頭痛が起こったときの対処法を紹介しましたが、依然として患者様からは「頭痛がつらくても会社を休めない」「偏頭痛に理解がない」というご相談を多くお受けします。
頭痛は日常生活に支障をきたすだけでなく、急な欠勤・予定のキャンセルなどから仕事や人間関係に影響を及ぼすこともあり、周囲の理解が非常に重要です。
そこで今回は、専門医の立場から『頭痛で休むことに対して職場の理解を得るコツ』をご紹介します。頭痛で休むのが良いとはされない環境で、どうすればご自身の健康や生活を守れるのか一緒に考えていきましょう。
目次
日本人の9割が頭痛を我慢しながら仕事をしている
頭痛の中でも比較的多く見られる「偏頭痛」は日本人の約8%が持っているとされ、とくに30代女性の有病率が高いと言われています。
30代といえば働き盛り・子育ての真っ最中という方も多く、痛みを抱えながらの仕事や家事育児は、非常につらい状況だと想像できます。本来であれば、痛みが過ぎ去るまで静かな場所で休むべきでしょう。
ところが実際には、頭痛で休むことに対して周囲の理解を得るのは難しく、ある調査によると「日本人の9割以上が頭痛を我慢して仕事をしている」という報告もあるほどです。
なぜ、これほど「我慢」をする人が多いのでしょうか?このような風土が根付く要因には、頭痛が比較的多くの人が経験する症状であることや、「頭痛によって生活に支障をきたす人もいる」という実態が周知されていないことなどが考えられます。
また、厳しい言い方かもしれませんが、頭痛を抱えている患者様自身が「休んだら迷惑をかける」「怠けていると思われる」と無理をしてしまうことも、周囲の理解が進まない要因のひとつです。「ただの頭痛でしょ」という周囲の誤解とともに、「頭痛くらいで休めない。自分が我慢すればいい」という患者様自身の自己犠牲が、頭痛で休むことを難しくしているように思えてなりません。
ご自身の頭痛について周囲の人に正しく伝え、「仕事を休まざるを得ないほどつらい症状」を理解してもらうことが、状況を改善する一番の方法だと考えます。
「頭痛で仕事を休む」ことに後ろめたさを感じないためのコツ
では、偏頭痛を周囲の人に理解してもらうにためにはどうすればよいのでしょうか?具体的な方法をいくつかご紹介します。
頭痛ダイアリー・頭痛アプリを活用する
まずは、ご自身の頭痛の特徴をつかむためにも「頭痛ダイアリー」をつけてみましょう。すでに頭痛治療を受けていて、ご存知の方も多いと思います。
「つけたことがない」という方は、さっそく今日から始めてください。頭痛専門の医療機関や、日本頭痛学会のホームページで手に入れることができます。
頭痛ダイアリーをつけるメリットは、痛みの程度や服用した薬を記録することで頭痛のパターンが把握できる点です。頭痛の前兆や天候なども記入しておくと、より詳細な頭痛の記録となり、治療を進めるうえで重要なデータとなります。
また、データを残しておくことで、会社に自分の体調の変化を提示することもできます。データや診断書がないと会社側も確認のしようがないため、周囲に理解してもらうにはこうしたツールを使うのも良いでしょう。
現在では便利なアプリも開発されており、アプリ上で頭痛ダイアリーの記録ができるのはもちろん、天気や気圧予報のデータに基づいた頭痛予測も可能です。
専門医の診察を受け、診断書をもらう
頭痛で休むことに後ろめたさを感じる背景には、「頭痛は大した病気ではない」という周囲の誤解と、「頭痛くらいで休めない」「迷惑をかけたくない」という患者様自身の強い責任感があります。
また頭痛ダイアリーやアプリのデータを会社に示すだけでは、納得してくれない可能性もあります。
この両者の問題を解決する方法が、医師による診断書です。職場に対しては「頭痛によって生活や仕事に支障をきたしている」「十分な治療と休養が必要である」と証明するものであり、患者様にとっては「今はしっかりと休む必要がありますよ」と背中を押すきっかけになります。
「頭痛がひどくても仕事を休めない」という方は、ぜひ専門医の診察・治療を受けるとともに、職場に診断書を提出して現在の状況を伝えましょう。これらのことは、良好な人間関係を保ちながら仕事を続けるために大切なことです。
頭痛が予測できる場合はあらかじめ伝えておく
頭痛ダイアリーやアプリを活用するうちに、頭痛の起こるタイミングが分かってくると思います。頭痛のパターンをつかむことができれば、「この日はお休みをもらうかもしれません」と事前に伝えることや、休みになっても困らないように仕事を共有しておくなど早めの対策が可能です。
頭痛はケガのように目に見えてわかるものではありません。しかし、頭痛は突然起こるものです。頭痛ダイアリーやアプリを活用して、事前に頭痛の予測ができるようになることで頭痛の可能性を伝え、仕事量を調整することができるかもしれません。
「その日になって急に休む」のと、「事前に休むかもしれないと伝えておく」のでは、職場の人の反応もだいぶ違うのではないでしょうか。
普段から職場の上司・同僚とコミュニケーションを取っておく
そして最後に、普段から職場の上司・同僚と信頼関係を築いておくことが非常に重要です。「慢性的な頭痛に悩んでいる」「頭痛治療を受けている」と率直に伝えましょう。「じつは私も・・・」と同じように悩む人がいたり、頭痛に対して理解を示してくれたりする人が見つかるかもしれません。
「頭痛ぐらいで上司や同僚に相談するのは・・・」と考えてしまうかもしれません。しかし、理由のわからない欠勤が続くと、会社側としても対策を立てることができず、双方の負担が大きくなることもあるでしょう。連絡や相談を密にしておくことで、仕事をカバーしてもらえることもあります。電話や直接打ち明けるのが難しければ、メールで伝えてみてはいかがでしょうか。
はじめは難しいかもしれませんが、職場の理解を得るためにも、ご自身の状況を周囲に伝える努力が必要です。
症状は素直に伝えるのがベター
頭痛で休むときは症状を素直に伝えましょう。なかには、最初は頭痛と素直に伝えていたけれど、休む頻度が高くなり体調不良以外の別の理由をつけて休むようになったという人もいます。
頭痛は気圧の変化などである程度起こりやすい時期を予測することができますが、環境やストレスなどでも突然起こるものです。休むたびに欠勤の理由を偽っていては、会社側も対策を取りにくくなってしまうでしょう。
また、異なった理由をつけて休むことに後ろめたさを感じてしまい、それがストレスになって余計頭痛を悪化させることもあるかもしれません。
また前日症状が出て休み申請をしていても、当日症状が回復していれば出社することもできます。今後治療に専念する環境を作るためにも、やはり素直に伝えるのがベターです。
より働きやすい職場へ転職・別部署に異動する
頭痛は薬でコントロールしたり、休みをとって安静に過ごしたりすることで症状を緩和させることができます。しかし、職場によっては頭痛が起きたときにすぐ対応できないこともあるでしょう。
頭痛の頻度が高い場合や、症状がひどい場合には環境を変えてみるのも一つの方法です。勤務する部署を変えたり、転職したりして、無理をせずに働ける場所を探してみましょう。
安心して仕事を続けるためにも、頭痛についてオープンに話しましょう
頭痛が原因で、仕事のモチベーションや人間関係に支障が出るのは問題です。
ご自身の状況を伝えるのは簡単なことではありませんが、周囲の理解を得るためにも、思い切って頭痛の症状や治療について話してみましょう。専門医による診断・治療を受けていることが周知されれば、周囲の受け止め方も少しずつ変わってくることでしょう。
当院では、偏頭痛に関するご相談や、診断書の作成にも対応しております。「偏頭痛のつらさを職場で理解してもらえない」「診断書の提出を求められた」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
大清水クリニックでは、患者様の症状を和らげ、快適な毎日をお過ごしいただけるよう診療に努力いたします。
また大清水クリニックでは、子供の頭痛はもちろんのこと、めまい・しびれに悩む女性に寄り添った治療もご提案しています。
つらい頭痛・めまい・しびれ等にお困りの方は名古屋市緑区の大清水クリニックへお気軽にご相談ください。